ブラジャーとマーケティング
マーケティングでは,企業が持っているコントロールする力,つまりマーケティング・ミックスと言われているものを用いて,自分がコントロールできない環境に対応していいきます。
このマーケティング・ミックスとは「
製品」「
価格」「
流通」そして「
販売促進」です。
そして企業がコントロールできない環境とは「
文化・社会的環境」「
企業の資源と目的」「
競争的環境」「
経済・技術的環境」そして「
政治・法律的環境」などがあります。
その中の「
技術的環境の変化」が企業に与える影響を紹介したいと思います。
最近はIT技術の発展でビジネスのすべてのシーンで技術的環境が大きく変化しています。
そして,いまその波に乗って自社ビジネスを大きく伸ばしている企業も少なくありません。
ここでは,ITではなく,素材の技術革新が女性の心を強く捉えた事例を紹介します。
形状記憶合金とは高温の状態である形を記憶したものであり、力を加えて変形させても、ある一定の温度を加えると最初に記憶した形に戻ることができるものです。
この合金は1970年にアメリカ海軍兵器研究所で開発され、最初はF-14戦闘機の油圧パイプのジョイントに使われました。
この形状記憶合金はいろいろな応用が期待されていたのですが、特にこれといった活用ができていませんでした。
ワコールはこの形状記憶合金を、従来のブラジャーにある胸用カップのワイヤーとして採用しました。
このブラジャーのワイヤーは洗濯で伸びたり曲がったりと変形しても、体に装着すればその体温で記憶された元の形に復元されるのです。
ワコールはそれを最新の新素材を用いていることは特に強調させずに,体に気持ちよくフットするという感性面を全面に押し出して「
ソフィブラ・ここちE」を発売しました。
1985年春完成したハイテクブラジャーは,テスト販売を行い成功を確信して1986年の春から夏までのキャンペーンを行いました。
結果は60万枚という大ヒットをしたのでした。
この思わぬ分野での採用で、形状記憶合金のマーケットは大きく伸びたのですが,それ以上に女性は心地いいブラジャーを手に入れることができたのです。
女性は素材が何とか,技術が何かと気にしません。
商品として自分の生活を高めてくれる,良くしてくれるものを支持するのです。
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